この仕事を始めたときは、カリキュラムを「作る」側になることを想像していませんでした。カリキュラムは「従う」べきものなので、教える側も教わる側も、ほとんどの人が「従う」側にいます。法律のような存在です。実際に教えていると、不備に気づいたり、「こうした方がいいのに」とも思いましたが、「従う」側にいる限り、根本的に変えるわけにはいかないので、許容範囲内で対応してきました。GENUINEを始めるにあたって、カリキュラムを「作る」側になりましたが、このようにしてきたので、作ることに何の躊躇もありませんでした。3年間の「流れ」を意識して教えていれば、それがカリキュラムの根底を貫いているものなので、土台は既に築かれていました。短期的な視点で授業をしていたら、塾用教材の目次を写したようなカリキュラムになっていたかもしれません。
カリキュラムは、GENUINEの看板商品である授業の主軸であり、「こだわり」の多くを具現化したものです。そして、生徒の学習に大きく影響するので、綿密かつ慎重に作りました。「流れ」は既に固まっていましたが、細部を調整するために、季節講習を含む3年間分の授業をシミュレーションしてはカリキュラムにフィードバックするということを繰り返しました。GENUINEの中学1年の学習内容が、一般動詞ではなくbe動詞から始まる(「GENUINEがbe動詞から始める理由」をご参照ください)のも、このように熟考を重ねた結果です。
中学1年の英語であれば通塾しなくても大丈夫だと思われていたり、受験学年になってから通塾し始めても間に合うと思われている場合は、3年という期間は長いと受けとめられているかもしれません。けれども、英単語を知らないどころか、アルファベットさえもきちんと書いたことがない英語初心者の状態からスタートしたにもかかわらず、英文法を一通り学習し、そして英語長文を読めるレベルに達するのに、3年間は決して長くありません。基本的な内容だけでなく、難関校を受験するために発展的な内容にまで取り組むのであればなおさらです。そして、苦手になることなく確実に得意になるには、3年間では短いぐらいです。一方的に教えるだけなら3年間も必要ないかもしれませんが、それでは、生徒の自主性に委ねることになるので、得意になる可能性よりも苦手になる可能性の方がずっと高いです。カリキュラムは、英語を得意にするために、長くはない3年間を効率的かつ効果的に使うための計画なのです。
入試本番までの3年という期間だけでなく、授業の回数(週に1回)と時間(3時間)という制約もあるので、無制限にカリキュラムを組めるわけではありません。また、英文法を終えて英語長文/過去問に取り組み始める時期や、学校の進度など、調整しなければならないこともあります。削れる学習内容は全くないので、学習内容の重要度に合わせて強弱をつけたり、季節講習と役割分担をしたりすることで、3年間を余すことなく目一杯使い切っています。
カリキュラムは、レストランのコース料理のメニューのようなものです。外から見えるのはメニューに載っている料理名だけですが、その料理を作るためのレシピがあります。それは、学校では「学習指導案」や「板書案」に当たります。たいてい、そういった類のものは塾にはなく、カリキュラムと教材が指定されているだけなので、塾用教材の目次のようなカリキュラムになることが多いです。GENUINEでは、カリキュラムと学習指導案(GENUINEでは「学譜」と呼んでいます)は表裏一体なので、カリキュラムにとっても、授業をするにあたっても、学習指導案は不可欠です。学習指導案を見れば授業が「見える」ので、レストランのレシピと同じように、基本的には非公開です。授業は看板商品なので、当然だと思います。GENUINEではカリキュラムしか公開していないので、他塾のカリキュラムと見比べても違いがあまりわからないかもしれません。けれども、GENUINEのカリキュラムは、決して塾用教材の目次を写したようなものではなく、それぞれに明確な意図があり、細部まで徹底的に練った結果できあがったものです。カリキュラムは、授業で実現できているので、授業(板書を書き写したノート)を通じて理解していただければと思います。